ありふれた日常だった日々が死ぬほど懐かしくなるとき

おしゃれなカフェと場末の飲み屋を足して割ったみたいなお店とでも言おうか。待って、ちょっとだけ待って、そんなのないしなんて言わないで。もう少し話聞いてもらってもいいですか。

たとえば、あのデパートの横の裏道を入っていったところにある、鎖みたいな名前が付いた文学カフェか、その斜向かいにあるパリっぽい名前のカフェとか。或いは大通りの向こう側、路面電車の線路沿いに坂道をずっと上っていって、古めかしいビルの角を曲がった通りにある、サイフォンでコーヒーを淹れてくれるカフェ。私のイメージだと、あんな雰囲気なんだけれど。おしゃれの中に潜む場末感。だいぶ照明を落としてあって、夜遅くまでやっているお店で。カップルなんかより、同性同士、男女でも友達同士っぽい人たちが二人で来て静かに話し込んでいるような。

まあ、とにかく場所はそんな感じのお店のイメージで。仕事帰りの20時頃に待ち合わせて、ジャケ買いだったけど当たり引いたね~くらいのワイン飲みながら、美味しいんだか美味しくないんだかわかんないようなチーズだの、やたら酸っぱいだけのピクルスだの、市販のポテトチップスだのつまんで、しまいにはなんかお腹すいてきちゃったとか言って、でも軽食なんかは置いてないか品切れか、それこそ今日はシェフいないんで、なんて言われたりして、結局ケーキを食べながら、ヴィンテージっていうか、スプリングの具合が明らかにおかしいくせに座り心地は嫌いじゃないみたいなソファに座って、答えの出ない悩みを永遠に語り合っているうちに、気づいたらかなり深い時間、みたいなやつ。

それか、ビールをごくごく飲みながら、この間行った旅行の話とか仕事の愚痴とか、最近誘われて行ったデートがいかにつまらなかったかとか、予告編が面白そうだった映画の話とか、とりとめなく話しながらアジア料理か何かをもりもりむしゃむしゃ食べて、お店を変えてデザートタイムにしようかってカフェに行ったんだけれど、スイーツ食べ終わってなお話は尽きなくて、そのままワインを注文して話し続けて、よく考えたら閉店時間過ぎちゃってるんだけどお店の人もなんか知り合いみたいな人と話し込んでるし、ほかにもまばらにお客さんがまだ残ってて、金曜だしなんかそんな感じなのかしら、なんて思いながら、なんだかんだで空気がキンキンに冷える頃ようやく帰路につく、みたいなやつ。

そういうの、最後にしたのいつだったかなあ。